やわらか金融道

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間違うように祝福される・バラム短歌連作

焼き付いた穴ばかりで歩いていける夜空さえ虫食いのバンダナ

たよりないあわいは吹けばどこまでも飛ぶから綴られぬ一節

まあかるい色の瞳よ!光だけがあるオマエの世界を踏んで

世界にも見せてやらない赤っ恥そこでひとりで歌ってたこと

ただ一度っきりのように飯を食う欠けてる皿を並べていたい

土くれをなすりつけ合う頬の色、連れ合いながら歩いてた日の

ひとりきりずぶ濡れているさま見せて半開きの口摘まれてしまう

千年を閉じ切らずにいる瞳の弓と刺すはむしろのあばらを抱いて

割り込みのやましさだけで立っている廊下 向こうへ行こうと言って

子どもいろの目を隠していたかっただけ 嘘っぽい黒のマニキュア

たわんでるひもの底には結び目が二つそのようにわれらはあり

金水晶のひとゆく道のその畔に灰と撒かれた俺の骨粉

いつの間に咲いたの朽ちてゆくためにっていうより先に唇塞ぐ

仕方なさの前に立って泣かないでいられる硬度どうかください

意味のないことばかりするひと半身で割り込んだ俺を殴ってくれよ

赤がよくお似合いです披露宴とか着るのにおそろしいですね

傷付いたゲームボードの目をなぞりここでだったら王にもなれる

ひたすらに道を回って踏みしめておいたってのにそれはないだろ

同じもの二つ欲しがるわけなんていっこ失くしたってだけだって

占いはでたらめだから怖いその花は墓にでもくれてやろう

一瞬を引き延ばしたりふんづけて広げてみたり遊んでねえよ

偽物がオマエの中に住んでいる俺いつ死んでもいいかもしんね

忘れないことばっかりの蓮の実キモって言わずにいてありがと

悪魔って悪いことしかしてないし、勝手にマヨを掛けたりするし

それならさ先に差し出す考えは同じで頬にダブルXX

海中で暮らしてなくてほんとうによかった岩に降られて笑う

3060円でなれる魔王あなたの唯一無二の才能

つるむってアパート二人用らしく不動産屋の扉をたたく

どこにでもいけそばにいてくれをやじるし引いて説明させる

地図もなく歩いてた頃世界一鋭くあったオマエを見てた

いつまでも辿り着かずにいられない小走りくんの夏休み編!

すこしなら離れていても大丈夫後ろ歩きでその距離を視る

もう一度望まれることがあるものか流れ星さえ紙屑なのに

月にはいっしょに行けません地上から6ばい伸びるもちを見てます

押されれば走れる象の心臓と300年も止まらぬ振り子

ひかり色もっともっとね見せてよねプリズムいつか帰るべき日々

同じ目を持ってることは公然のひ・み・つ以上に大事に仕舞う

思わずの言葉捨てられてはないかただ気になって横にいてみる

共に閉じ込められてくれとは言えず回廊オマエを挑発してる

オマエだけにわからぬよう歌ったり、囁いたりすることさえあるよ

戯れる指に輝くシルバーを砕き去りたくグーにて負ける

知らされずにいることだけ知っていてその手を伸ばしてキネステーゼ

この下に死体が埋まってるってことどうかあなたは知らずにいてね

逸れるのが難しいから足跡もきれいあなたを導きますか

まずいまずいって言いつつ食べ残しのない銀スプーンの温度は

ロールオンおまえなんにも隠せないほうがよっぽどさみしいみどり

走ってる止まっているの間には生きてるオマエの言葉がある

あたえられること当然って思うそういうふうに手をつないでる

金の泡あふれ瓶首に口付けたどこにいるにもぎこちないひと

駆り狩り借りしひかり。オマエの瞳の水晶いまください。

苔むした尾を引きずってついていくへび オマエの字愛してる

これからどこまで歩くことになってそれでもここを峠と決めて

あしたには古くなってる羽摘んでくすぐりあってばかり永遠

正しいちょうちょ結びを急いてほどく空でもうれしいの贈り物

オマエにもつばさがなくて良かったと抱きすくめている骨のかたち

ためだけがあればよくって食器はそのまま流しに置いてていいよ

朝のみずは冷たい 訊かせろよ なあ、オマエ年取らなくてもいいの?

死んだあと星になってよ地に帰り海に流れて瞬き返す

飽きるほど共鳴したい飽きるほどぼおんぼおんと揺らすたましい

同じ家に帰れないって泣いてみるコンビニポテチを開けちゃう路上

なんにもおんなじでないって運命になるまでオマエを観察してる

会いに来ることがうれしく離れては振り返らずに目を閉じて待つ

オマエとはずっと一緒にいられない気がしていたよ釘を打つ音

もし海に行ったならば俺たちは 幌に溜まった雨粒払う 

五つある頭に四つある手足一つも心臓なくて良かった

stand by me 空から見てるよりずっと小さく古びた墓標

つま先を踏まれてしまう冬の日のマンホール悪魔めって言った

残酷なこどもあなたは世界ごと救いたいってドミノを倒す

読めもしない楽譜をなぞりここの歌詞俺のことって訊いてくる

繰り返し歌わされても擦り減らぬダイヤコートの青春ソング

髪を編むようにくさりを継ぎながら行く塔からの眺めは知らず

いじわると言われてうれしそうにする甘い酒だけ飲み重ねてる

スライムを嚥下するたび軽くなりきょうはどっかに遊び行こうぜ

突然ということばは嫌い。ジェンガとか、ドミノみたいなゲームって好き。

それだけでいいって言質供えつつ花立の水汲むあたらしく

小水の髪、あなたは陽を受けて間違うように祝福される

腕を組むところばかりを見るようなどんなオマエも割と猫舌

ネコのエサ奥歯で噛んできみが言う、世界のことわりとかの話は

大の字になって眠れる旅慣れたオマエの鼻の角度を測る

だってそのマフラーだけじゃ寒いからついていくなら繋ぎたいから

歳はしくじく折られ嵩む紙 四十二回で月にも届く

深緑の血が滲んだ膝小僧 絆創膏を変える夜更けに

越年の時あなたの誕生日を思う架空のケーキにろうそくを足す

世界はおれたちの前に正座してきっとすぐ会えるよと言った

透明なケーキを混ぜたラーメンの毒に気付かず白い皿底

オマエは牙の名残を触らせて祈るみたいに眠りについた

合うことがなければのもし摘んでからその紙で鼻水まで噛んだ

仰ぎ見る陽が眩しく閉じたまぶたを流るるその血にいつかなります

とっときのきれいな包み紙を出す用ばっかりの日々を貰って

健やかな子をたぶらかす趣味としてパイプはあり窓際の煙

足取りは軽く空さえ踏み外すことのできない星に生まれて

一人でも生きていけると知っていてもう一人分席を取り待つ

はじめから繋いでいればと思わない手は温まって心地よくある

首元に刃 それでもまだ信じてるっていうの 遠い足音

開かれているとは知らずかき分けて気付けば随分汚れた羽で

大丈夫って言う根拠差し出そうとするときにもう頷いた

いつかまたって来たことあったか?冬、あなたはもう一度生まれる

飛ばぬよう作られた腕それでもあなたをぶん殴ることはできる

寝返りを打つ頭引き寄せながら思い通りにならない他人

おまけ:二次創作短歌を作る時

短歌は音数の制限を受けているので、4コマで終わる漫画が「ドテー!」と一番面白いところで終わるように、「最後のオチがグッと来る」構成にしなければならないと思ってます。

「深緑の血が滲んだ膝小僧 絆創膏を変える夜更けに」

この短歌について説明します。

①密やかな手当って愛だな、バラムが安心して怪我するまで戦えるのはメギド72に入ったからだな〜、と思いつく

②調停者の血、というアイテムを思い出す。これを翻案して短歌にしたい!

③どうしてその状況になったのか説明がいる。この場合は戦闘で怪我をしたので怪我をした部位で表現する。腕、胸、肩など……考えた中で、いちばんバラムのかわいい少年みたいな顔に似合うのは膝小僧という単語だと思う。

④一度文に起こす

「膝小僧に馴染む血ガーゼを当てられる」

⑤文に起こした中で足りない要素を埋める。シチュエーションがわかりにくいので「夜」とし、親密な感じを追加。

⑥ついでに、「滲むならもっと軽い扱いでいい、多分医療メギドたちに対して膝の傷なんか見せない→絆創膏をソロモンやフルフルや誰か親密な人に貼ってもらう」と考えた。

「膝に深緑の血の滲む夜絆創膏貼ってくれたあなた」

⑦調整して完成

「深緑の血が滲んだ膝小僧 絆創膏を変える夜更けに」

その他気をつけていることは以下の通り。

  • 硬さの調整ということがあって、その時読んでいるものや話している相手にすごく影響される。硬い≒全部単語が強くて情報量が多いことが良いことではなくて抜きも必要。
  • しかしこの人くらいの強度で書きたいなと思って歌集とか読んでいるとトレパクって感じの歌ができてしまうのですごく注意したいです。自分の形を見つけて維持するのとても難しい。
  • 短歌は歌なので口ずさめるような単語の滑りの良さが必要で、文法はわりと二の次にしています。あえててにをはを入れ違えたりとか。
  • オタクとしてオタクには短歌が向いているなと思うのはとても抽象的なシーンや異能力でもなければ実現しない光景というのを理由なく読み込めるところです。小説よりポエムの方が優っているポイントだと思います。
  • 二次創作短歌作ってて難しいことはカップリングの文脈を借りすぎないようにするってことで、フラットな状態でも良いなって思える歌でないと……と思うんだけど、自分自身はフラットになれない……。
  • 自分ではエモーション載せたつもりでいても事実を書いてるだけってことがあるので何回も読み返す必要がある
  • 上手いこと言おうとしない!いろんな強いフレーズはもう先に手をつけられているので表記法や使うタイミングを工夫してそれを抜かす必要があると思う。先出の作品が好きだったりその文脈に乗りたければ不要の行為です

 

バラムがまた生まれてきたことを祝福したいです。本当にありがとう!