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連作・海洋から/災禍より遠く来りて春嵐

ゴエリン4で「海洋から」というソロバラの短歌集、「災禍より遠く来りて春嵐」というアッキピテルイメージの連作をそれぞれ頒布しました。通販のほうにもお付けしています。

反省も含めて一言ずつセルフ解説をしようというのがこの記事の目標です。恥ずかしいですが、これも勉強と思って頑張ります。作者のそういうの見たくないんだよね……という方もご心配なく、後半でまとめて振り返りますので、前半の作品パートだけお読みください。

海洋から

見られないもの見たいねって分別のないままの賞味期限は

贖罪のリンゴ切り分けて配ればここの誰もが楽園卒で

パンケーキ死ぬほど焼いた日の肌はちょっと湿っているしにおうよ

離れずにとか言えん 並んで食べるそば 聞いてキーホルダーのイニシャル

貝で掘る先に何にもなくってもオマエいるから恥ずかしいよな

やり方としてはACアダプター 常時接続だから☆2で

死なないしはじめてじゃないことばっかはじめてぐらいうれしい死ぬほど

趣味じゃないのだけ選んで着せ合えばオマエと俺が入れ替わってる⁉

もしおまえ死んだらおれは生き返り永久機関のように暮らす

何度でも茶番の中に を見る が埋まらない 繰り返す

いつまでもかわることなくともだちで 今の音程たぶんズレてる

目がレンズってやっぱり真剣っぽい 灼きつくし、だいぶ光って見える

青とか赤が好きだけどほんとうは 好きになってきたよほんとに

いち 足す いち で王って書くんだぜ だから何って 別に何でも……。

つーかつか歩いてきても近いとかいうのはそっちばっかでずるい

歩くより早い方法教えてや……………………らない!どうせオマエに翼はないし

パレードの真ん中よりも後ろくらい適当ぶって歩いてるから

パレードでどこ歩くかを決めるとき多分もう祝福されてたんだ

じゃあ俺はこっちああ俺はこっち の角で石になってくような

果てがいまじゃないから果てしないってゆー あ、浮島落ちた あっちで

あの時の沈黙言葉だったって伝わったならよかった けどさ

いつかもし 何か言ったか?いや別に って取り漏らした海洋から

 

災禍より遠く来りて春嵐

奪うものと与えるものは時として同じ 横流しでもよかった

傷が襲いきた時の傷付き方は? 唾をつけてもわからずにゆく

災禍より遠く来りて春嵐のひとと知れば再び訣る

個を破り共に至れぬ俺たちは 俺はあんたと食い異なった

いつ_どこ / 何もかもを / 知る事なく / 口を唯開き / 待つ海は今

何からも託されず生き逃れ得てここで 予感がないのが死だと

ここでならば永劫勝つ 目が合ったよりも昔の思い出は巌

瞬くなら 石の内でも感ずるか 知れた答えをぬぐってやれば

一瞬に閉じ込められて延々 尚切り捨てられた数百年

それだけで生きていける健気さはなくて 飢え癖があった一羽の鷹

 

一言解説

海洋から

いくつか食べ物にまつわる歌を用意しようと思いました。

見られないもの見たいねって分別のないままの賞味期限は

頭にくる一首なので、私が思う二人の関係性を全体的に表すように作りました。分別→ゴミ←賞味期限みたいな発想の繫がりだったり、夢や願望の賞味期限、みたいなイメージです。

贖罪のリンゴ切り分けて配ればここの誰もが楽園卒で

贖罪のリンゴというゲーム内アイテムがあります。この世界では林檎を食べることが原罪だったのに、あの世界では林檎を食べて贖罪をするというのが面白いと思いました。メギドたちは追放されてきているわけで、全員同窓生ともいえるのではないかなと思います。

パンケーキ死ぬほど焼いた日の肌はちょっと湿っているしにおうよ

極楽テラケーキをイメージして書きました。極楽から死、肌と焼くと湿りで質感を表すような感じで……これはちょっと距離感近い歌ですね

離れずにとか言えん 並んで食べるそば 聞いてキーホルダーのイニシャル

言うまでもなく「ソロバラ」で「そば」なのですが、風景としてイメージしたのは駅の立ち食いそばです。卒業間際の忙しい時期に並んでそばを食べながら、進路の話とかはとてもできないけど、たまたまお前と俺のイニシャルのキーホルダーが残ってた、とかそういう話はできる……みたいなイメージです。話しかけるほうの健気さを意識して作りました。

貝で掘る先に何にもなくってもオマエいるから恥ずかしいよな

夢十夜』・第一夜の歌です。この話において穴は「何かを見つけるために掘る」ものではなくて、「女性の死体を埋めるために掘る」ものなのですが、一方的に相手を見つめる状況は照れくさいな~と思って作りました。

やり方としてはACアダプター 常時接続だから☆2で

これはあまり作った時のことを覚えていないのですが……多分バラムがメギド体になって飛んでるためにはフォトンの定期的な供給が必要だな、そうなるとパスがある程度定着して有線のようになるんじゃないかな、みたいなことだと思います。

死なないしはじめてじゃないことばっかはじめてぐらいうれしい死ぬほど

解説することがありません。先に状況把握が来てしまうようなかわいげを見出しています。

趣味じゃないのだけ選んで着せ合えばオマエと俺が入れ替わってる⁉

これはすごくかわいいのですが、ちょっとロジックとして間違っているので悲しいです。

服の趣味が合わないAとBがいて、Aの好きじゃないものを着たBと、Bの好きじゃないものを着たAは、ただのBとAなので、入れ替わってないんですよね。

もしおまえ死んだらおれは生き返り永久機関のように暮らす

これは、おれは生き返りのところで「死んでたんだ」と気付いてもらえるかな~と思いながら作りました。

何度でも茶番の中に を見る が埋まらない 繰り返す

この句を挿入することによって、以降の空白に意味を見出してもらえるかなと思って作りました。バラムの根源的なところには寂しさや穴があるので、今の瞬間もいつかの穴になるのではないか……と考えている、みたいな歌です。

いつまでもかわることなくともだちで 今の音程たぶんズレてる

「今日の日はさようなら」から上の句をもらいました。ズレてるとかズレてないとかそういう話をすることでさようならせずにいられるというテクです。

目がレンズってやっぱり真剣っぽい 灼きつくし、だいぶ光って見える

ヴァイガルドの家庭医学がどのレベルかわかりませんが……フォトンの凝光のイメージです。光って見える対象は任意に取ってもらうつもりで書きました。

青とか赤が好きだけどほんとうは 好きになってきたよほんとに

ソロモンは魔王として黒とか紫とか紺とか使われることが多いなと思って書きました。

いち 足す いち で王って書くんだぜ だから何って 別に何でも……。

足すいちになりたい的な歌を作ってもいいような気がします。下句はちょっと逃げのような気もしますね。

つーかつか歩いてきても近いとかいうのはそっちばっかでずるい

歩いて近づいてきたほうが勝手に「近い」とか言ってくるのが萌えだな~と思って書いたのですが、動作主がわかりにくいなあっと反省しました。

歩くより早い方法教えてや……………………らない!どうせオマエに翼はないし

下の句が結構気に入っています。上の句はもう少し洗練できる気がします。歩くより飛ぶ方が早いとは限らないような?

パレードの真ん中よりも後ろくらい適当ぶって歩いてるから

これは不死者イベでパレードをするという話が出たときに、バラムはどこを歩くんだろうと思って作った歌です。歩いてるから、何~~??という……でもこれは悪い「何?」じゃない気がします。

パレードでどこ歩くかを決めるとき多分もう祝福されてたんだ

同じテーマで作った歌です。この歌の「どこ」は「どういうルート」とも取れるかと思います。

じゃあ俺はこっちああ俺はこっち の角で石になってくような

道の角で別れられなくて長い時が経って石になってしまった、というイメージですが、ような、何なのかが全然詰められていないなと思いました。景色は好きなんですけど……

果てがいまじゃないから果てしないってゆー あ、浮島落ちた あっちで

浮島が落ちるような終わりみたいな風景を前にして、それでもまだ果てでないというのは希望なのかどうなのか、みたいな歌です。あっちで、のところはもうすこしいい言葉があるような気がします……

あの時の沈黙言葉だったって伝わったならよかった けどさ

これは72話「馬鹿野郎」の後に「…………」と返すソロモンのダイアログが、ただの沈黙ではなくて、なにか意味を持っていたんじゃないのかな、と考えて作りました。区切りを入れたのは先の「 を見る」の歌を意識してのことです。けど、わかりにくかったかな、という内省なのか、けど言ってくれたらよかったのに、ということなのか……わりあいお気に入りの歌です。

いつかもし 何か言ったか?いや別に って取り漏らした海洋から

これも言葉繫がりですね。取り漏らした言葉が水たまりになって海になり、そこからなにか返ってくるようなイメージで書きました。循環をイメージさせる歌が添えてあるともっと意味が分かりやすいかもしれません。海洋はもちろん牙の内海をイメージしています。

災禍より遠く来りて春嵐

奪うものと与えるものは時として同じ 横流しでもよかった

常勝の戦場を与えてきたバラムは、他から奪うことをしていたともいえる、しかも部下をうまく利用して、奪ってきたものを与えて飢えを紛らわさせていたともいえるんじゃないかな、と思って作りました。軍団長と軍団員の関係は、ただの上司と部下ではなくて、師弟とか兄弟のような感じなのかなと想像しています。

傷が襲いきた時の傷付き方は? 唾をつけてもわからずにゆく

これもなんだかもんにゃりしている……傷以外の良い表現があると思います。

災禍より遠く来りて春嵐のひとと知れば再び訣る

上の句が抜群に良く、連作のタイトルにしたくらいなのですが、下の句がそれに耐えるものかといわれるとちょっと……小手先で誤魔化した感がないでもないような……

個を破り共に至れぬ俺たちは 俺はあんたと食い異なった

やっぱりアッキピテルの特徴は「喰う」ところなので。他の個を食って自分のものにしてしまう特性の彼は生きにくかったろうなと思います。

いつ_どこ / 何もかもを / 知る事なく / 口を唯開き / 待つ海は今

72のマップの形に合うように作りました。上から与えられた戦争でバラムと再会してしまったの、つくづく不運な男だと思います。

何からも託されず生き逃れ得てここで 予感がないのが死だと

死に際のアッキピテルが、死ぬことよりもバラムや己の個に執着していたので、そこを詠んでみました。

ここでならば永劫勝つ 目が合ったよりも昔の思い出は巌

バラムの合わせるべき目ってどれかわからないし、アッキピテルもどこに目があるのかよくわからないので、目が合うよりも先に確信することがあるんだろうなと思いました。でも二次創作過ぎる歌だなと思います。

瞬くなら 石の内でも感ずるか 知れた答えをぬぐってやれば

オーブになってからの歌です。知れた答えというのはもちろんNOで、それが次の歌で分かるように作りました。

一瞬に閉じ込められて延々 尚切り捨てられた数百年

あの戦争の時のアッキピテルとしてオーブにされて、どうにかしがみついてきた数百年がまったく無いものになる(あるいは彼の世界にはフィードバックされるかもですが、バラムには全然届かないですよね)、アッキピテル、つくづく哀れだなと思います。

それだけで生きていける健気さはなくて 飢え癖があった一羽の鷹

ブニやマスティマなど、追放された同胞のために生き、なにもかも投げ出してしまえるような思い切りのいいメギドもいる中で、アッキピテルはそう育てられなかったから、そうなれなかったんだろうと想像します。

 

以上、どちらも実は2日くらいで詠んだもので、精査があまりにも足りないのですが、少なくとも自分が多作はできると知ることが出来て良かったです。短歌のほうが小説よりもストレートに感情を切り取ることが出来、面白いなと思います。

短歌がうまくなりたいです。また勉強しようと思います。